クマラスワミ報告を読んでみたら、吉田証言の真偽などほとんど関係ないワ

「クマラスワミ報告」に対して、「吉田証言」がどの程度の影響を与えているか知りたくて、報告を読んでみました。

ネットには、(財)女性のためのアジア平和国民基金の資料 pdf と荒井信一さんという方の訳された html がありました。

全文はこちら – 慰安婦問題アジア女性基金デジタル記念館 

クマラスワミ報告

これを読むと、日本国内の論争(にもなっていない)と世界の認識にはとんでもない大きな隔たりがありそうだと感じます。そもそも、報告書、つまり世界は、強制性の度合いが狭かろうが広かろうが、個人の意思に反して女性が性的サービスを強要されたことは「性奴隷制」だと言っています。

アジア平和国民基金の pdf が画像なのか取り出せませんので、荒井信一さんの html からの引用ですが、140 パラグラフある報告の内、冒頭の 6 でこう言っています。特別報告者とはクマラスワミさんのことです。

6.特別報告者は、戦時、軍によって、また軍のために、性的サービスを与えることを強制された女性の事件を軍事的性奴隷制の慣行ととらえていることをこの報告書の冒頭で明らかにしておきたい。

で、吉田証言が出てくるのが、29 の後半、ここだけですね。

29(略)さらに戦時中におこなわれた狩り出しの実行者であった吉田清治は、著書のなかで、国家総動員法の一部として労務報国会のもとで自ら奴隷狩に加わり、その他の朝鮮人とともに1000人もの女性たちを「慰安婦」任務のために獲得したと告白している。

そして、40 では、吉田証言を否定的にみる秦郁彦さんの反論が述べられています。

40特別報告者は東京の歴史家、千葉大学の秦郁彦博士が「慰安婦」問題にかんする幾つかの研究、とくに済州島での「慰安婦」の状況について書いた吉田清治の著書に反論したことを指摘しておく。博士の説明では、彼は1991~92年に大韓民国の済州島を史料収集のため訪れたが、「慰安婦犯罪」の主犯は実際には朝鮮人区長、売春宿の持ち主及び少女自身の親たちでさえあった。教授の主張では親たちは娘の徴集の目的を知っていたというのである。議論の裏付けとして秦博士は、1937年から1945年にかけての慰安宿のための朝鮮人女性徴集システムの二つのひな型を示した。どちらのモデルも朝鮮人の親たち、朝鮮人村長および朝鮮人ブローカーたち、すなわち民間人たちが日本軍のために性奴隷として働く女性たちの徴集に協力し、役割を果たしたことを知っていたことを明らかにしている。秦博士はまた大部分の「慰安婦」は日本陸軍と契約を結んでおり、月あたり兵隊の平均(15~20円)の110倍(1000~2000円)もの収入を得ていたと信じている。

こうしてみると、「吉田証言が虚偽だったのだからクマラスワミ報告も間違っている」なんて論法は、自ら報告を読んでいないことを公言しているようなものですね。

で、TBSのラジオ番組「荻上チキのSession22」で、自民党の原田義昭衆院議員が恥ずかしい目にあっていました。番組の48分くらいのところです。


「朝日慰安婦報道に関する自民党・国際情報検討委員会の決議」全文掲載 – 荻上チキ・Session-22

この自民党の「外交・経済連携本部 国際情報検討委員会」の決議文もひどいもので、こうした世界情勢に対する認識のズレが戦争へ突っ走っていったひとつの要因だと思うのですが…。