千葉雅也著『オーバーヒート』感想・レビュー・書評・ネタバレ

千葉雅也さん、この『オーバーヒート』も前作の『デッドライン』に引き続いての芥川賞候補です。残念ながら受賞は逃しています。 オーバーヒート 作者:千葉雅也 新潮社 Amazon 『デッドライン』の続編… 「言語は存在のクソだ!」 やはり私小説 若さへの決別 …

ケン・リュウ著『円弧 アーク』感想・レビュー・書評・ネタバレ

映画「Arc アーク」を見て、こんな陳腐な(ペコリ)映画になってしまう SFの原作とは一体どういう作品なんだろうと図書館に予約しておいたものがやっと順番が回ってきました。ケン・リュウさんという作家を知りませんでしたのでその興味もあります。 あらた…

村上春樹著『ドライブ・マイ・カー』感想・レビュー・書評・ネタバレ

村上春樹さんの短編小説『ドライブ・マイ・カー』が濱口竜介監督によって映画化され、現在カンヌ映画祭のコペンティションに出品されています。 その小説は『女のいない男たち』という短編集に収録されており、映画を見る前に読んでみました。 女のいない男…

木俣正剛著『文春の流儀』感想・レビュー・書評・ネタバレ

著者の木俣正剛さんは文藝春秋社に40年間勤められ、その間に『文藝春秋』や『週刊文春』の編集長を担当され、2018年の退社後は岐阜女子大学文化創造学部の教授として教鞭をとられ、現在は同大学の副学長の職にある方です。 その木俣さんの文春時代の回想録で…

木崎みつ子著『コンジュジ』感想・レビュー・書評・ネタバレ

昨年2020年の「すばる文学賞」受賞作であり、2020年下半期の「芥川賞」候補作です。 その「芥川賞」の受賞作は、宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』でした。 コンジュジ (集英社文芸単行本) 作者:木崎みつ子 集英社 Amazon 川上未映子さん超絶賛 客観的に語られ…

柚月裕子著『孤狼の血』(ネタバレ)アウトロー刑事対暴力団&警察組織の任侠小説

別ブログで映画のレビューを書いていますが、「娼年」あたりから松坂桃李さんへの注目度が上がっており、「孤狼の血 LEVEL2」公開前に予習をしておこうと「孤狼の血」をDVDで見たところ、何だ、この下品な話(映画)は?! と驚いたものですから原作を読んで…

吉川惣司 矢島道子著『メアリー・アニングの冒険』

映画「アンモナイトの目覚め」を見て知ったメアリー・アニングさん、映画でも一応化石収集家として描かれてはいますが、テーマは一貫してレズビアンというセクシュアリティを追った映画になっていました。 実在した人物なのにこんな一面的な描き方でいいのか…

村田沙耶香著『コンビニ人間』この小説に批判性はあるのだろうか…

5年前の芥川賞受賞作をなぜ今頃ということなんですが、受賞時、それ以前に「タダイマトビラ」という作品を読んおり、その書き出しには惹きつけるものがありながら、結局、観念世界から一歩も出ることなく、率直なところかなり幼い印象で終わってしまったこと…

宇佐見りん著『推し、燃ゆ』感想・レビュー・書評・ネタバレ

言わずと知れた2020年下半期の芥川賞受賞作です。 初回、文藝春秋で読み始めるも挫折、たまたま図書館に予約してあった『かか』を無理かなと思いつつも読み始めたところその才能にびっくり! 再度この『推し、燃ゆ」に挑戦したところ、読み進んでみれば、20…

チョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』感想・レビュー・書評

映画より小説を読むべき 最後の「2016年」の章がこの小説の肝 キム・ジヨンの33年間 女性が働きやすい国ランキング 映画より小説を読むべき 半年くらい前に見た映画「82年生まれ、キム・ジヨン」の原作を読みました。リンク先のレビューに書いたことは間違っ…

深沢潮著『海を抱いて月に眠る』在日二世が亡き父の手記から自らのルーツを再認識する

在日二世の主人公が父親の遺品である手記を読み、それまで知らなかった父の過去を知ることで自身のルーツを再認識するという物語です。その手記には戦後日本にわたってきた父親が祖国に戻ることを胸に歩んできた30年の歴史が刻まれています。 それはつまり、…

吉田修一著『湖の女たち』(ネタバレ)731部隊、やまゆり園、湖東記念病院

このところの吉田修一さんは連載ものの単行本化が多いように感じます。これも週刊新潮に2018年8月から1年くらいにわたって連載されていたとのことです。 それにしても連載ものって、書く人も読む人もよく集中力が持続するものだと感心します。 吉田修一著『…

磯崎憲一郎著『日本蒙昧前史』感想・レビュー・書評

『日本蒙昧前史』 学術書のようなタイトルの小説です。それに「蒙昧」という言葉自体も無知蒙昧などと人格否定にも使われそうな言葉ですので、あまり日常的に目にしたり耳にしたりする言葉ではありません。さらに「前史」として描かれる時代が1970年くらいか…

藤野可織著『ピエタとトランジ<完全版>』80歳の女子高生が「死ねよ」「お前が死ねよ」と…

読み始めてしばらくは、何だ、これ、ラノベか?! などと思いましたが、読み終わってみれば素敵な小説でした。 人類の滅亡を女性二人の一生で描く近未来小説であり、荒野にただひとり取り残されたようなアポカリプス感漂う物語です。 ピエタとトランジ <完…

千葉雅也著『デッドライン』性の境界線を思索する

章番号のないプロローグのような導入は男と男の性愛の場、映画では同性の恋愛ものも結構見ますが、ここでの描写は恋愛感情を抜きにしたいわゆる(有料)ハッテンバと言われる場所です。そこでの主人公の〇〇の行動を追う描写から始まります。 デッドライン …

金城一紀著『GO』やっぱり映画より原作のほうが面白い

なぜか20年前の直木賞受賞作を読むことになりました。 面白かったです。 GO (角川文庫) 作者:金城 一紀 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 他の本も読んでみようかと著作リストを見てもあまり小説は書いていないんですね。テレビドラマの脚本の方へ進ん…

小泉今日子著『黄色いマンション 黒い猫』

黄色いマンション 黒い猫 (Switch library) 作者:小泉今日子 発売日: 2016/04/15 メディア: 単行本 小泉今日子さん。 あらためて考えてみれば、「トウキョウソナタ」や「ふきげんな過去」も見ているわけですから、もうとっくに「キョンキョン」や「なんてっ…

井上荒野著『あちらにいる鬼』父親讃歌、あるいは男をめぐる女の悲劇

面白かったんですが、そんなに井上光晴さんってのは魅力的な人だったの? って聞きたくなるような小説です(笑)。 あちらにいる鬼 作者:井上 荒野 発売日: 2019/02/07 メディア: 単行本 井上光晴さんと瀬戸内寂聴さんが不倫関係になる1966年あたりから、そ…

沼田真佑著『影裏』画鋲で留められた電光影裏斬春風の模造紙

沼田真佑著『影裏』 映画の印象があまり良くなく、原作はどんなものかと読みました。2017年上半期の芥川賞を受賞しています。 影裏 (文春文庫) 作者:真佑, 沼田 発売日: 2019/09/03 メディア: 文庫 映画との関連で言えば、この小説を、書かれていることその…

宮下奈都著『静かな雨』映画とはまた違った小説の世界

宮下奈都著『静かな雨』 映画を見て興味を持ち読んだんですが、 随分違いますね。 映画の感想はこちら。 随分違うというよりもまったく異なった作品になっていると言ってもいいくらいです。 まず人物像が全然違います。映画の行助はかなり寡黙な人物ですが、…

湊かなえ著『落日』頭の中で考えた物語は人間を描けない

湊かなえ著『落日』 新聞の書評で興味を持ち読んだ本です。その書評がネットにありました。 東京新聞:落日 湊(みなと)かなえ著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web) 湊かなえの新たなる代表作、今年最高の衝撃&感動作。重い十字架を…

金原ひとみ著『アタラクシア』

アタラクシア|金原ひとみ|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー 金原ひとみさん、10年ぶりに読みました。前回読んだのはいつだったかとサイト内を検索しましたら『TRIP TRAP/トリップ・トラップ』でした。その時も久しぶりに読んだと書いています。 この…

白石一文著『火口のふたり』映画の原作本

映画「火口のふたり」の原作本です。 映画のレビューはこちらです。 この映画を見るまで白石一文さんを知らなかったのですが直木賞作家なんですね。 物語としては、映画はほぼ原作通りに進んでいます。ただ、映画では言葉だけの賢治の背景にかなり嘘っぽさを…

吉田修一著『犯罪小説集』10月18日公開予定の映画「楽園」の原作

吉田修一さんの『犯罪小説集』という小説が「楽園」というタイトルで映画化されると知り、読んでみました。映画は見ていませんが、以下、小説からの想像でネタバレ的な内容がありますのでご注意ください。 吉田修一著『犯罪小説集」 それぞれ犯罪絡みの5つ…

今村夏子著『むらさきのスカートの女』

今年2019年上半期の芥川賞受賞作です。 【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女 作者: 今村夏子 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/06/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 津村記久子さんの『ポトスライムの舟』を読んだ際…

津村記久子著『ポトスライムの舟』『十二月の窓辺』

2008年下半期の芥川賞受賞作です。処女作の『君は永遠にそいつらより若い』 に続いて読みました。 2008年下半期の芥川賞受賞 ポトスライムの舟 十二月の窓辺 ポトスライムの舟 (講談社文庫) 作者: 津村記久子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2011/04/15 メ…

津村記久子著 『君は永遠にそいつらより若い』

初めて津村記久子さんの本を読みました。 君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫) 作者: 津村記久子 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2009/05/11 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 49回 この商品を含むブログ (53件) を見る 面白いという言葉がピッ…

松尾匡、橋本貴彦著 『これからのマルクス経済学入門』 日本のMMT提唱者

「財政赤字は悪でも脅威でもない」MMT提唱の米教授:朝日新聞デジタル 「れいわ新選組」の山本太郎さんが注目されていることと連動して、にわかに反緊縮、MMTの話題が目立つようになっています。提唱者の一人、ニューヨーク州立大のステファニー・ケルト…

望月衣塑子著『新聞記者』 映画よりも権力の怖さがわかる

映画「新聞記者」の原案との触れ込みの望月衣塑子さんの「新聞記者」を読みました。 ああ、逆ですね、映画のほうが望月さんの名前を触れ込んでいるということです。 新聞記者 (角川新書) 作者: 望月衣塑子 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/10/12 メ…

品田悦一著『万葉集の発明』

令和騒ぎもやっと落ち着いてきました。 このIT時代に元号など面倒なだけとは思いますし、実際、excelでは自作のプログラムが動かなくなっています。まあ、深く考えずに元号を使っていたわけですから自業自得ではありますが、これからはすべて西暦を使おうと…