彩瀬まる著『やがて海へと届く』感想・レビュー・書評・ネタバレ

中川龍太郎監督に注目しているということもあり、「やがて海へと届く」を見て原作を読んでみました。どことなく感じていたしっくりこないいくつかのわけがわかりました。 やがて海へと届く (講談社文庫) 作者:彩瀬まる 講談社 Amazon 小説でもすみれの存在感…

吉田修一著『ミス・サンシャイン』感想・レビュー・書評・ネタバレ

吉田修一さんの本は久しぶりだなあと思って読んだのですが、なんと一年前に『湖の女たち』を読んでいました。記憶に残るものが少なくなってきているんでしょうか、怖いですね(笑)。 ミス・サンシャイン (文春e-book) 作者:吉田 修一 文藝春秋 Amazon 優し…

ウスビ・サコ著『サコ学長、日本を語る』感想・レビュー・書評・ネタバレ

ウスビ・サコさんの名前を何で知ったのかははっきりとは記憶していませんが、多分大学の学長になられたことをネットで見たんだと思います。2018年の4月から京都精華大学の学長を務めてみえます。 そのサコさんが日本での生活や日本の価値観に感じることを書…

柴崎友香著『きょうのできごと』感想・レビュー・書評・ネタバレ

『きょうのできごと、十年後』を読み、面白かったのでデビュー作『きょうのできごと』も読んでみました。 デビュー作とは思えないほど軽やかで余裕があります。余裕ってのも変ですね、気負いがないという方があたっているかもしれません。 きょうのできごと:…

青木理著『破壊者たちへ』感想・レビュー・書評・ネタバレ

青木理さんの著書は『日本会議の正体』『安倍三代』、そして『時代の抵抗者たち』と読んできています。批判することや異議を唱えることが嫌われるこの時代にあって、テレビのコメンテーターとしても常に権力を監視することこそがジャーナリストの役目である…

柴崎友香著『きょうのできごと、十年後』感想・レビュー・書評・ネタバレ

昨年末、一日中ただ本を読むくらいしかやることがない(できない)一日を過ごさざるを得なくなり、図書館で2冊借りてその日のうちに読んだものの1冊です。日常の会話文が多い小説ですのであっという間に読めてしまいます。 きょうのできごと、十年後 (河出文…

パトリック・ネス著『混沌の叫び/心のナイフ』感想・レビュー・書評・ネタバレ

ダグ・リーマン監督の「カオス・ウォーキング」をみて結構面白かったので原作を読んでみました。ただ、原作はこの『心のナイフ』から『問う者、答える者』『人という怪物』と続く三部作とのことですので、読んだといっても第一部だけです。 心のナイフ 上 混…

笛美著『ぜんぶ運命だったんかい』感想・レビュー・書評・ネタバレ

「#検察庁法改正に抗議します」のハッシュタグを最初に発信した「笛美」さんの…と書いてキーボードを打つ指が止まってしまいました。この本は、なんて表現すればいいんでしょう? もちろん小説ではありませんし、んー、著作ですかね。 と、出版元の「亜紀書…

千葉雅也著『オーバーヒート』感想・レビュー・書評・ネタバレ

千葉雅也さん、この『オーバーヒート』も前作の『デッドライン』に引き続いての芥川賞候補です。残念ながら受賞は逃しています。 オーバーヒート 作者:千葉雅也 新潮社 Amazon 『デッドライン』の続編… 「言語は存在のクソだ!」 やはり私小説 若さへの決別 …

ケン・リュウ著『円弧 アーク』感想・レビュー・書評・ネタバレ

映画「Arc アーク」を見て、こんな陳腐な(ペコリ)映画になってしまう SFの原作とは一体どういう作品なんだろうと図書館に予約しておいたものがやっと順番が回ってきました。ケン・リュウさんという作家を知りませんでしたのでその興味もあります。 あらた…

村上春樹著『ドライブ・マイ・カー』感想・レビュー・書評・ネタバレ

村上春樹さんの短編小説『ドライブ・マイ・カー』が濱口竜介監督によって映画化され、現在カンヌ映画祭のコペンティションに出品されています。 その小説は『女のいない男たち』という短編集に収録されており、映画を見る前に読んでみました。 女のいない男…

木俣正剛著『文春の流儀』感想・レビュー・書評・ネタバレ

著者の木俣正剛さんは文藝春秋社に40年間勤められ、その間に『文藝春秋』や『週刊文春』の編集長を担当され、2018年の退社後は岐阜女子大学文化創造学部の教授として教鞭をとられ、現在は同大学の副学長の職にある方です。 その木俣さんの文春時代の回想録で…

木崎みつ子著『コンジュジ』感想・レビュー・書評・ネタバレ

昨年2020年の「すばる文学賞」受賞作であり、2020年下半期の「芥川賞」候補作です。 その「芥川賞」の受賞作は、宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』でした。 コンジュジ (集英社文芸単行本) 作者:木崎みつ子 集英社 Amazon 川上未映子さん超絶賛 客観的に語られ…

柚月裕子著『孤狼の血』(ネタバレ)アウトロー刑事対暴力団&警察組織の任侠小説

別ブログで映画のレビューを書いていますが、「娼年」あたりから松坂桃李さんへの注目度が上がっており、「孤狼の血 LEVEL2」公開前に予習をしておこうと「孤狼の血」をDVDで見たところ、何だ、この下品な話(映画)は?! と驚いたものですから原作を読んで…

吉川惣司 矢島道子著『メアリー・アニングの冒険』

映画「アンモナイトの目覚め」を見て知ったメアリー・アニングさん、映画でも一応化石収集家として描かれてはいますが、テーマは一貫してレズビアンというセクシュアリティを追った映画になっていました。 実在した人物なのにこんな一面的な描き方でいいのか…

村田沙耶香著『コンビニ人間』この小説に批判性はあるのだろうか…

5年前の芥川賞受賞作をなぜ今頃ということなんですが、受賞時、それ以前に「タダイマトビラ」という作品を読んおり、その書き出しには惹きつけるものがありながら、結局、観念世界から一歩も出ることなく、率直なところかなり幼い印象で終わってしまったこと…

宇佐見りん著『推し、燃ゆ』感想・レビュー・書評・ネタバレ

言わずと知れた2020年下半期の芥川賞受賞作です。 初回、文藝春秋で読み始めるも挫折、たまたま図書館に予約してあった『かか』を無理かなと思いつつも読み始めたところその才能にびっくり! 再度この『推し、燃ゆ」に挑戦したところ、読み進んでみれば、20…

チョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』感想・レビュー・書評

映画より小説を読むべき 最後の「2016年」の章がこの小説の肝 キム・ジヨンの33年間 女性が働きやすい国ランキング 映画より小説を読むべき 半年くらい前に見た映画「82年生まれ、キム・ジヨン」の原作を読みました。リンク先のレビューに書いたことは間違っ…

深沢潮著『海を抱いて月に眠る』在日二世が亡き父の手記から自らのルーツを再認識する

在日二世の主人公が父親の遺品である手記を読み、それまで知らなかった父の過去を知ることで自身のルーツを再認識するという物語です。その手記には戦後日本にわたってきた父親が祖国に戻ることを胸に歩んできた30年の歴史が刻まれています。 それはつまり、…

吉田修一著『湖の女たち』(ネタバレ)731部隊、やまゆり園、湖東記念病院

このところの吉田修一さんは連載ものの単行本化が多いように感じます。これも週刊新潮に2018年8月から1年くらいにわたって連載されていたとのことです。 それにしても連載ものって、書く人も読む人もよく集中力が持続するものだと感心します。 吉田修一著『…

磯崎憲一郎著『日本蒙昧前史』感想・レビュー・書評

『日本蒙昧前史』 学術書のようなタイトルの小説です。それに「蒙昧」という言葉自体も無知蒙昧などと人格否定にも使われそうな言葉ですので、あまり日常的に目にしたり耳にしたりする言葉ではありません。さらに「前史」として描かれる時代が1970年くらいか…

藤野可織著『ピエタとトランジ<完全版>』80歳の女子高生が「死ねよ」「お前が死ねよ」と…

読み始めてしばらくは、何だ、これ、ラノベか?! などと思いましたが、読み終わってみれば素敵な小説でした。 人類の滅亡を女性二人の一生で描く近未来小説であり、荒野にただひとり取り残されたようなアポカリプス感漂う物語です。 ピエタとトランジ <完…

千葉雅也著『デッドライン』性の境界線を思索する

章番号のないプロローグのような導入は男と男の性愛の場、映画では同性の恋愛ものも結構見ますが、ここでの描写は恋愛感情を抜きにしたいわゆる(有料)ハッテンバと言われる場所です。そこでの主人公の〇〇の行動を追う描写から始まります。 デッドライン …

金城一紀著『GO』やっぱり映画より原作のほうが面白い

なぜか20年前の直木賞受賞作を読むことになりました。 面白かったです。 GO (角川文庫) 作者:金城 一紀 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 他の本も読んでみようかと著作リストを見てもあまり小説は書いていないんですね。テレビドラマの脚本の方へ進ん…

小泉今日子著『黄色いマンション 黒い猫』

黄色いマンション 黒い猫 (Switch library) 作者:小泉今日子 発売日: 2016/04/15 メディア: 単行本 小泉今日子さん。 あらためて考えてみれば、「トウキョウソナタ」や「ふきげんな過去」も見ているわけですから、もうとっくに「キョンキョン」や「なんてっ…

井上荒野著『あちらにいる鬼』父親讃歌、あるいは男をめぐる女の悲劇

面白かったんですが、そんなに井上光晴さんってのは魅力的な人だったの? って聞きたくなるような小説です(笑)。 あちらにいる鬼 作者:井上 荒野 発売日: 2019/02/07 メディア: 単行本 井上光晴さんと瀬戸内寂聴さんが不倫関係になる1966年あたりから、そ…

沼田真佑著『影裏』画鋲で留められた電光影裏斬春風の模造紙

沼田真佑著『影裏』 映画の印象があまり良くなく、原作はどんなものかと読みました。2017年上半期の芥川賞を受賞しています。 影裏 (文春文庫) 作者:真佑, 沼田 発売日: 2019/09/03 メディア: 文庫 映画との関連で言えば、この小説を、書かれていることその…

宮下奈都著『静かな雨』映画とはまた違った小説の世界

宮下奈都著『静かな雨』 映画を見て興味を持ち読んだんですが、 随分違いますね。 映画の感想はこちら。 随分違うというよりもまったく異なった作品になっていると言ってもいいくらいです。 まず人物像が全然違います。映画の行助はかなり寡黙な人物ですが、…

湊かなえ著『落日』頭の中で考えた物語は人間を描けない

湊かなえ著『落日』 新聞の書評で興味を持ち読んだ本です。その書評がネットにありました。 東京新聞:落日 湊(みなと)かなえ著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web) 湊かなえの新たなる代表作、今年最高の衝撃&感動作。重い十字架を…

金原ひとみ著『アタラクシア』

アタラクシア|金原ひとみ|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー 金原ひとみさん、10年ぶりに読みました。前回読んだのはいつだったかとサイト内を検索しましたら『TRIP TRAP/トリップ・トラップ』でした。その時も久しぶりに読んだと書いています。 この…