中路啓太著 『ゴー・ホーム・クイックリー GHQ』 未だなし得ていない大いなる命題

2019.05.24

 中路啓太著 『ゴー・ホーム・クイックリー GHQ』 ゴー・ホーム・クイックリー作者: 中路啓太出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/11/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 「ゴー・ホーム・クイックリー」これは未だ日本がなし得ていない大いなる命題。 1945年8月15日敗戦、その後、日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による占領下に...

濱口桂一郎著『働く女子の運命』

2019.05.09

日々閑々,

働く女子の運命 (文春新書)作者: 濱口桂一郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2015/12/18メディア: 新書この商品を含むブログ (10件) を見る 上の画像にあるジェンダーギャップ指数101位とあるのは2015年のことで、最新の2018年版では110位と下がっており、その間の2016年は111位、2017年は114位と、政府の「女性が輝く世界」などという...

吉田修一著 『ウォーターゲーム』

2019.04.14

吉田修一さんの「鷹野一彦シリーズ」の三作目です。これで完結になるんでしょうか、そんな終わり方です。 ウォーターゲーム作者: 吉田修一出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2018/05/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 産業スパイの物語で、旅行関連情報会社を隠れ蓑にしたAN通信という組織で働く(ともちょっと違う)鷹野一彦を主人公としたアクシ...

小石清写真集『初夏神経』と『半世界』

2019.03.13

阪本順治監督の映画「半世界」を見て、小石清さんという方はどういう作品を残しているのだろうと興味がわき、図書館で写真集『初夏神経』と『日本の写真家15 小石清と前衛写真』を借りました。映画の感想はこちら。movieimpressions.com借りた本はこちら。初夏神経 (日本写真史の至宝)作者: 小石清出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2005/07/01メディア:...

長山靖生著 『帝国化する日本-明治の教育スキャンダル』

2019.03.05

帝国化する日本――明治の教育スキャンダル (ちくま新書)作者: 長山靖生出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2018/09/06メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る この『帝国化する日本』というタイトル、仰々しいだけに、あえて今の日本を批判的に批評する内容かと思いましたら、副題にもあるように明治から大正にかけての国家教育の変遷を事細かに論じた本でし...

保坂正康著『昭和の怪物 七つの謎』

2019.02.20

昭和の怪物 七つの謎 (講談社現代新書)作者: 保阪正康出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/07/19メディア: 新書この商品を含むブログ (5件) を見る タイトルや本のカバー写真からはかなり古さが感じられますが、昨年2018年7月に出版された本です。 本の紹介文を発行元の講談社から引用しておきます。私の使命は、昭和前期から無謀な戦争に突入し、悲惨な...

平野啓一郎著『ある男』 城戸は偽善者との読後感になってしまった…

2019.02.06

ある男作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2018/09/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る ツイッターでフォローし始めたこともあるのでしょうか、デビュー作以来読んでいなかった平野啓一郎氏ですが、『マチネの終わりに』に続く二作目『ある男』です。テーマは、他の人間の人生を生きる、他人に成り変わるといったことで、具体的には戸...

橋本健二著『新・日本の階級社会』 労働者階級がアンダークラスを抑圧する?

2019.01.25

日々閑々,

 新・日本の階級社会 (講談社現代新書)作者: 橋本健二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2018/01/18メディア: 新書この商品を含むブログ (14件) を見る 厚労省発表の「毎月勤労統計調査」で特別監査委員会が組織的な隠蔽は求められなかったとの検証結果を発表していましたが、10年以上もわかって不正をしていたのに組織的不正じゃないって、どういうこと?「...

青木理著『安倍三代』 凡庸でいい子の無知と無恥

2019.01.23

日々閑々,

安倍三代作者: 青木理出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2017/01/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見る 安倍晋三の系譜で三代と言えば、岸信介、安倍晋太郎、そして安倍晋三と、おそらく多くの人がおじいさんとして岸信介を思い浮かべると思いますが、そうではなく安倍家側のおじいさん、安倍寛に連なる三代という...

東浩紀著『ゲンロン0 観光客の哲学』

2019.01.10

ゲンロン0 観光客の哲学作者: 東浩紀出版社/メーカー: 株式会社ゲンロン発売日: 2017/04/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (48件) を見る 東浩紀さんを初めて読んだせいなのか、読みにくかったです(笑)。何がかといいますと、本の構成にリズムがなく、行ったり来たりの繰り返しで、いつになったら本論に入ってくれるの? みたいなイライラがつのり、一度目...

佐藤優著『十五の夏』 中学生、高校生におすすめ

2018.12.19

佐藤優さんって、「知の巨人」と呼ばれているらしいんですが、当然、そうなればアンチが生まれるわけで、「インチキ」だの「デタラメ」と言われたりもします。まあ雄弁で迷いなく断言するところが良くも見え、悪くも見えるんだと思います。で、この『十五の夏』、まだ上の中ほどまでしか読んでおらず、図書館で借りた本ですので返却期限で返してしまったのですが、なかなか面白いです。佐藤氏が浦和高校一年の夏休みに東欧...

姫野カオルコ著『彼女は頭が悪いから』 いやあ~な小説だね、これ。

2018.12.12

新聞の書評で引っかかってしまった本です。引っかかった自分を棚に上げておいてなんですが、タイトルが下世話ですね。結構売れているという話もあり、狙い通りということでしょう。文藝春秋BOOKS2016年に起きた「東大生強制わいせつ事件」を題材にしたフィクションです。著者がどの程度の取材をしたのかはわかりませんが、こうしたセンシティブな問題を、2年後の今、ノンフィクションではなくフィクション...

吉田修一著『国宝(上下)』 連載小説ではなく書き下ろしの大作を期待する

2018.12.06

この『国宝』、昨年から今年の5月にかけて朝日新聞に連載された小説の単行本化とのことです。連載小説なんてかなりプレッシャーのかかる作業ではないかと思いますが、吉田修一さんの最近の作品はほとんどこのパターンですし、個人サイトを見てみても三本が連載中とあります。性に合っているんでしょうか。というより、書き下ろしという出版スタイルが成立しにくくなっているのかも知れません。売れないという意味です。連載...

小手鞠るい著『炎の来歴』 正論だけれども現実感の乏しい平和ファンタジー

2018.11.16

炎の来歴作者: 小手鞠るい出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/05/22メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 小手鞠るいさん、はじめて読みます。なかなか、著者あるいはこの小説のポジションといいますか、どの視点から書いているのかが定まらず、面白いなあと思う反面、なんか変だなあ、ふわふわと地に足のつかないような現実感のない感覚に、最後まで戸惑いながら読...

白井聡著『国体論 菊と星条旗』と 内田樹著『日本辺境論』

2018.10.31

日々閑々, , 歴史

国体論 菊と星条旗 (集英社新書)作者: 白井聡出版社/メーカー: 集英社発売日: 2018/04/17メディア: 新書この商品を含むブログ (13件) を見る 冒頭、天皇の生前退位についての例の「お言葉」から書き起こしています。これですね。象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば:象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(ビデオ)(平成28年8月8日...

柴崎友香著『寝ても覚めても』 映画も良い、原作も良い

2018.09.22

映画,

寝ても覚めても: 増補新版 (河出文庫)作者: 柴崎友香出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2018/06/05メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る 映画が良かったので原作を読んでみました。面白いですね。この小説からあの映画が生まれるのかとも、この小説だからあの映画なんだとも、なんとも不思議な感じで、このふたつ、随分雰囲気は違うのですが、た...

鴻上尚史著『不死身の特攻兵』軍神はなぜ上官に反抗したのか

2018.09.14

, 歴史

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか (講談社現代新書)作者: 鴻上尚史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2017/11/15メディア: 新書この商品を含むブログ (15件) を見る 日本人に共通する死生観というものがあるのか、特攻隊と聞きますと純化された死のイメージが強く、なかなか「戦争」という現実の中で語ることができずにいるような気がします。この本は、佐...

広瀬隆著『カストロとゲバラ』

2018.08.20

カストロとゲバラ (インターナショナル新書)作者: 広瀬隆出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2018/02/07メディア: 新書この商品を含むブログを見る キューバとアメリカが半世紀ぶりに国交を回復したのが、2015年7月20日、3年になります。翌年の3月20日にオバマさんがキューバを訪問していますが、現在の関係はどうなっているんでしょう? 日本で...

平野啓一郎著『マチネの終わりに』 平成のすれ違いメロドラマ、 真ん中あたりで投げ捨てなければ(笑)読み応え充分

2018.08.02

マチネの終わりに作者: 平野啓一郎出版社/メーカー: 毎日新聞出版発売日: 2016/04/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (21件) を見る 久しぶりに平野啓一郎さんを読みました。映画化が決まっているようです。www.fashion-press.net確かに映画向きの話です。恋愛、それもアラフォーの純愛ものですから、福山雅治さんというキャスティ...

「ベロニカとの記憶」の原作=ジュリアン・バーンズ著『終わりの感覚』

2018.02.04

映画,

終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)作者: ジュリアンバーンズ,Julian Barnes,土屋政雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/12/01メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (31件) を見る 映画「ベロニカとの記憶」の原作です。 映画とは随分印象が違います。表現形態の違いと言ってしまえばそれま...