伊勢崎賢治氏のこの話(SYNODOS)を読めば、日米地位協定の問題点が丸わかり

「日米地位協定の『軍属』の範囲を限定する」とのニュースが流れていたのは、7月15日ですから10日前ですね。

結局、これまでと何も変わらず「運用」で対応するということだと思います。

で、この日米地位協定の問題点がもうひとつ理解できていなかったのですが、下にリンクを貼った SYNODOS「日米地位協定の裁判権は他国に比べて不利なのか? 伊勢崎賢治氏に聞く」がむちゃくちゃ分かりやすく、お薦めです。

日米地位協定、「軍属」範囲を厳格化 :日本経済新聞

synodos.

まず、地位協定とは何か? からの概要から入って、一番の問題となる「裁判権」についてですが、「現在の多くの地位協定の裁判権のスタンダード」となっている「NATO地位協定」と日米のものとに大きな違いはないそうです。

ただ、問題は、それのベースとなるそもそもの両者間の関係が違うということです。

NATOは「Military Alliance(軍事同盟)」ですが、日米は「Security Alliance(安全保障)」です。NATOの中のイタリアとドイツは、敗戦国という意味において日本と同じです。しかし、NATO諸国間の地位協定における関係は「互恵的」なのです。つまり、裁判権などの地位協定が、「受け入れ国」が「派遣国」に認める「特権」は、たとえばアメリカはドイツにも同じ特権を認めているのです。(SYSNODOS上記リンク)

その「互恵性」にもとづき、同じ敗戦国であるイタリアとドイツでさえ、米軍基地の管理権を全面回復し、飛行訓練も、基地に何を持ち込むかも「許可制」になっているそうです。核を持ち込んでも分からない日本とは大違いですね。

こうした話を聞けば、誰だって、じゃあ日米地位協定を改定しようとなるわけですが、問題は、この「互恵性」をどう確保するかで、一方の安倍晋三的理屈からいけば、

  • 日米安全保障条約の片務性が問題である
  • 自衛隊を国防軍とし、集団的自衛権を行使できるようにし、双務性を確保する
  • その上で、日米安全保障条約を改定し、地位協定も互恵性のあるものにする

となり、もう一方の護憲派(伊勢崎氏は左派と表現)は、この議論を正面から受ければ憲法九条改正となってしまうので、「反米」や「基地反対」という、反対のための反対になってしまい、議論が硬直化してしまっているということになります。

ただ、逃げるという意味では、安倍政権も同じですね。

もし、上の理屈が、沖縄への差別的構造を解消する最も良い方法だと考えるのであれば、姑息な手段に逃げ込まず、「日本の主権を取り戻すためには憲法改正が必要だ」と正面から主張すべきです。

この点について伊勢崎氏は、国内に米軍基地を置いているどの国も、基地の主権はその国が持っている(奪取してきた)わけだから、まずは「(日本の)主権の回復」を志向し、その後「左・右の論争」を始めたらどうかと提言しています。

この提言、現実的な道がみえなく、「主権」=「憲法改正」になってしまうから前に進めないんでしょ、と言いたくなりますが、伊勢崎氏、こんな文章で答えてくれています。

他のフツーの国との地位協定でアメリカが譲歩してきたのは、それらの国に「軍」があるからではなく、大きな「国民運動」があったかどうかなのです。