上間陽子著『裸足で逃げる』

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)

裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (at叢書)

 

沖縄に暮らす6人の女性たち。虐待、DV、レイプ、その多くの女性が10代にして出産、シングルマザーとしてキャバクラなど夜の街で働きながら子育てをしているという現実です。

琉球大学教授上間陽子さんが、数年にわたって、10代から20代の女性たちに寄り添いつつ聞き取り調査したフィールドワークがまとめられています。

ただこの本は研究成果というよりも、個々の女性の人格を大切にしたいとの思いだと思いますが、一人ひとりを章立てにして丁寧に語られており、さらに著者によりますと完成原稿を読み聞かせて本人に了解を取っているとのことです。

その記述も、おそらく同情を誘ったりする記述は避けようと意識して書かれており、それが結果良いのか悪いのか分かりませんが、単に事実としてさらりと流ていくようにも感じます。

また、そうした記述のせいだと思いますが、それぞれの女性が、起きていることとは裏腹に皆強くしっかりしているように感じられるのは非常に奇妙な感覚です。

この女性たちに沖縄としての特殊性、具体的に言えば米軍基地の存在が影響しているのかどうかはこの本では語られていませんので、おそらく別の機会に発表されるのだとは思いますが、暴力装置である軍隊が常時生活の中にある環境であれば影響がないことはありえないでしょう。

仮に、これを知ってあなたはどうする?と尋ねられても答えようのない問題でもあり、こうした問題がより多く良いかたちで世に知らされることを願うばかりです。