岡村隆史、馳浩、阿部俊子よ、『なぜ、それが無罪なのか!?』

本を読んだ後に忘れないように書き残しておこうと書き始め、書き終えずに下書きのまま眠ってしまっている記事がいくつかあります。そのひとつ、伊藤和子さんの『なぜ、それが無罪なのか?』、この2、3日のうちに起きたことで日の目を見ることになりそうです。

岡村隆史の性搾取のために女性の貧困を待ち望む発言

そのひとつが岡村隆史さんの「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」での発言です。

記事によれば、新型コロナウイルス対策のために風俗に行けないことについて、「コロナが収束したら、もう絶対面白いことあるんです」「収束したら、なかなかのかわいい人が短期間ですけれども、お嬢(風俗嬢)やります」「短期間でお金を稼がないと苦しいですから。3カ月の間、集中的にかわいい子がそういうところでパッと働いてパッとやめます」と、つまり、新型コロナウイルス対策が終了すれば、収入がなくなり生活に困った女性がセックスワーカーとして収入を得ようとするので、それを楽しみに今はお金を貯めて待っていようと発言したと記事は言っているわけです。

本当にそうなのか聴いてみました。


2020.04.23 ナインティナイン 岡村隆史のオールナイトニッポン 【ゲスト:aiko・ももいろクローバーZ】

1:27:45あたり、確かに記事の通りです。バックの声はスタッフなんでしょうか、笑っていますね。

もう言葉もありませんし、そもそも下ネタ番組のようですが、これは下ネタでもなくなんでもなく次元の異なる問題で、岡村は無知そのものです。何が問題なのかを話しても理解しないでしょう。然るべき人が言い諭し教育するしかありませんし、自分で学ぶしかありません。いずれ謝罪はするでしょうが、謝罪云々よりも人間関係を変えるべきですし、いろいろな本を読むべきです。

政治家に潜む抑圧意識と馳浩のセクハラ

そしてもうひとつ、こちらも何が問題なのかも理解できない人たちの話です。


この件を正確に理解するには当事者であるColaboの公開質問状を読むべきです。

Colaboのサイトはこちら。

一般社団法人Colabo(コラボ)|女子高校生サポートセンター

ことの経緯と自民党議員への質問状はこちら。 

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2020/04/e15191a1ce1f7cc6364f14482462d8c0.pdf

まず、Colaboが運営している「Tsubomi Cafe」が何かを理解しておかないといけませんのでまずこちら。

10代無料の夜カフェ《Tsubomi Cafe》 – 一般社団法人Colabo(コラボ)|女子高校生サポートセンター

移動バスで運営されている10代の女性向けのシェルター・シェアハウスです。ですので、ここを訪れる女性は虐待や性暴力被害にあっている場合があり素性や居場所を知られるとまずいということであり、実際に加害者からの妨害もあるそうです。

ですので、訪問者の名前や所属などを事前確認することは必要なことであり、オープン時は入口に弁護士などスタッフをつけたりしているとのことです。

で、何が起きたかといいますと、

  • 一般社団法人Colabo(代表理事仁藤夢乃)は、虐待や性暴力被害に遭うなどした10代の女性を支える活動を行っている団体で、活動のひとつとして「Tsubomi Cafe」という10代女性無料のバスカフェを運営している
  • 自民党の阿部俊子議員から「バスカフェを視察したい」と連絡があり、
    • 5名までなら受け入れ可能
    • 訪問者が決まったらその方の名前を事前に知らせてほしい
    • 集合は17時、オープン前の18時までの利用者が来る前であればバスの中を見ることは可能であり対応できる

    と回答したところ、阿部氏からは「3~4人で行くと思う」とあった

  • ところが、当日(翌日)は、
    • ばらばらと来るなど集合時間が守られないし人数も守られない(15名ほど)
    • 自己紹介をお願いしても「秘書です」と答えない
    • 許可なく撮影をする
    • バスカフェの設営はColaboスタッフの指示に従ってほしいと言っても馳浩議員が勝手に仕切り始める
    • 馳浩議員ほか男性たちに威圧感を感じた(つまり、そもそも活動自体を理解していないため配慮がまったくない)
    • 馳浩議員は利用者のためのカフェスペースのテント内の席にどっしりと座っている(つまり、そこはあなたの座る場所じゃないことが理解できない)
    • 馳浩議員が10代の女性メンバーにセクハラ行為をした

    というColaboがコントロールできない状態になった

  • オープン直前に帰ってもらった

ある時間内に仮設で何かを準備しなければいけないという経験をしたことのある人であれば、この場の状況は容易に想像できると思います。それにこの抗議文を読みますと、仁藤さんの悔しい気持ちがひしひしと伝わってきます。

ところが、馳浩議員や阿部俊子議員にはそれが伝わらないのです。

馳浩議員、阿部俊子議員は自分たちが抑圧的だと気づけない

抗議文によると、

馳議員は 4 月 23 日に自身のブログで「団体代表のご指示に従い、バスから資材や食料などを運び出し、皆でテント設営。女性がほとんどなので、男性陣が率先して重いものを持ち、指示を受けて設営。」と書いていました

と、一時ブログに公開していたようですが、その後削除しているとのことです。

馳浩議員の現在のホームページにはトップページに「ハウジングファースト勉強会の視察の件」という記事があります。

トップページ|衆議院議員「はせ浩」のオフィシャルサイト

これを読みますと、馳浩議員は(ニュアンスとして)初めてColaboを知ったような書き方をしていますが、仁藤さんによると、2017年4月20日に阿部俊子議員とともにColaboの研修に参加しているとのことです。

さらに、馳浩議員は24日のブログに、「午前中、一昨日の新宿視察の件で阿部俊子代議士がお詫びにこられたので、対応を相談。」と書いています。

4月24日 | はせ浩 オフィシャルブログ「はせ日記」Powered by Ameba

こりゃ、ふたりともダメですね。なぜ、すぐに仁藤さんに連絡を入れないんでしょうね。普通そうするでしょう。

仁藤さんによれば、未だに誰からも謝罪どころか連絡もないそうです。

伊藤和子著『なぜ、それが無罪なのか!?』

ここからが下書きになっていたところで(笑)、書き足しました。

昨年の3月26日に名古屋地裁岡崎支部で、当時19歳の娘に対する準強制性交等罪で起訴されていた父親に出された無罪判決は衝撃的でした。

その後、今年3月12日、控訴審で懲役10年の逆転有罪判決が言い渡されてはいますが、なんだかもやもやした感じは残ったままです。

それは、この本のタイトル『なぜ、それが無罪なのか!?』そのままの気持ちなんだろうと思います。

なお、この裁判、被告が判決を不服として最高裁に上告しています。

著者の伊藤さんは弁護士ですので、一審の判決文にもとづいて問題点を指摘しています。

まず、判決文は「(略)被告人との間の性的行為につき自分が同意した事実はない旨のAの供述は信用でき、(略)被告人との性交はいずれもAの意に反するものであったと認められる」と言っています。なのに、なぜ無罪になるのか?

「抗拒不能」の証明という高いハードル

判決文は、刑法178条2項「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。(e-Gov法令検索」により、女性が「(略)抗拒不能の状態にまで至っていたと断定するには、なお合理的な疑いが残るというべきである。」として無罪を言い渡しています。

裁判の判決がどうなるかは、基本的には原告被告から出される証拠によるわけですからこの場合は一審の検察が「抗拒不能」を証拠で証明できなかったということになるのでしょうが、それにしてもアメリカやヨーロッパでは、No Means No、Yes Means Yes という考え方が強くなっており、法律まであるくらいですので、さすがに日本の刑法の前近代性は問題だと思います。

この本にはそうした海外の法律や事例も紹介されています。

なお、2017年に刑法が改正されて「監護者性交等罪」という犯罪が規定され、「18歳未満の者に対しては、親などの監護者がその影響力に乗じて性交等をする行為が処罰の対象」となっているそうです。

この事件の場合は、女性が2017年当時19歳であったので該当しないということです。

2017年以前の刑法は(性犯罪に関して)さらにひどいものだったということです。そうした点について、伊藤さんは、性被害にあってきた被害者たちが声を上げるなど市民運動が刑法改正の動きを作ってきたと語っています。

#MeToo運動、財務事務次官福田淳一氏のセクハラ事件、麻生大臣のセカンドレイプ、広河隆一氏の性暴力、そして元TBS記者山口敬之氏による伊藤詩織さんレイプ事件についても語られています。

性犯罪を他の犯罪と比べると

性犯罪を人のモノを奪う罪と比べて説明されているところがありとてもわかり易いです。

強制性 モノを奪う罪 性犯罪
承諾なく実行 窃盗罪 ない
畏怖させて実行 恐喝罪 ない
暴行・脅迫して実行 強盗罪 強制性交等罪

(注)言葉を少し変更しています。 

つまり、モノを奪う行為には相手の承諾なく実行すれば窃盗罪という罪になるのに性犯罪は暴行や脅迫があり、なおかつ抗拒不能を証明しなければ罪に問えないというのが現在の法律ということです。

男性本位の法律

現在の刑法は、2017年に一部改正されたとはいえ、性犯罪に関しては制定された明治40年(1907年)、この本の時点で言えば112年前のままの男性本位の法律であり、女性の人権がまったく考慮されていないということです。

2017年の改正時にもこの「暴行・脅迫、抗拒不能などの要件を撤廃すべきか否か」の議論がなされたとのことですが、ほとんどの学者が反対したそうです。その反対意見もこの本に記載されています。

長くなりますので引用はしませんが、要は多くの男性の中に「イヤよイヤよも好きのうち」「2人きりで食事、飲食をすれば性行為の同意ととられても仕方ない」といった価値観があるからということだと思います。

著者の提言

著者の刑法改正への提言があります。

  • 暴行・脅迫要件を撤廃し不同意性交を処罰する
  • 不同意は「言葉や行為によって、性行為を行うことについての同意がないことを示したこと」などの定義を定める
  • 暴行・脅迫によって行われた場合は、NOと言ったか否かに関わらず、犯罪とし重く処罰する。暴行・脅迫は、暴行罪、脅迫罪が成立する程度で足りるとする

もっともだと思います。

男性が自らを変えなければ変わらない

何かを変えるためには直接的に関係することだけではなく関連する様々なことを変えていかなければ何も変わらないと思いますが、こと社会的関係の多くのことはまずは男性自らが自分を変えていかなければ変わっていかないですね。

2020年のジェンダーギャップは日本121番目です。

http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf